前回の「ビブラートのかけ方のコツは、この喉の使い方と発声方法です」では、ビブラートが自然にかかる発声方法としてのミックスボイスと、ミックスボイスを作るための基礎練習についてご紹介しました。
今回はミックスボイスを発声するために必要な基礎練習、地声と裏声を発声し分ける練習とともに是非試していただきたい方法をご紹介します。
あまり馴染みがないかもしれないのですが、動作自体は簡単なのでやってみてください。
目次
ビブラートがかかるミックスボイスの練習方法
音声サンプル〜地声と裏声を繋げる
やや固い声の地声から始まり、次第に裏声を混ぜ、裏声の量を多くするにつれてミックスボイスになりビブラートがかかり始めます。
どんどん裏声を多くしていくとビブラートは消え、ミックスボイスから息を多く含んだ裏声に変わっています。
このサンプルでは一定の音程で地声、ミックスボイス、裏声と変化させていますが、地声と裏声を別々に発声練習する際には、地声は低い音域で、裏声は高い音域で発声しました。
しかし、実際に歌っている時にはCDのように、いつも決まった箇所で決まったことができるとは限りません。
特にライブでは湿度、温度、ライティング、お客様の反応、速度、のどの渇き具合・・・なにせライブは生ものですから、その時々で状態が変わってしまいます。
どんな状況でも流れて行く曲、歌を歌いきる精神力が必要になります。
地声であろうが、裏声であろうが、です。
逆を言えば、地声でも裏声でも歌うことが出来ていれば、どう転んでも歌を止めずに歌っていくことができます。
そこに・・・
ミックスボイスを使うことが出来れば、選択肢が2つから3つに増えます。これってすごいことなんです。
奇麗なビブラートを生む、地声と裏声の間にあるミックスボイスを手に入れましょう。
地声と裏声を繋げる練習1
<喉をなぞる>
1.地声で発声している時、指で喉の上の方を触ります。発音は「お」でも「あ」でもどちらでも構いません。
2.指に意識を集中させます。これから指を下ろして行くに連れてだんだん裏声が混ざってきます
3.指を喉をなぞるように、だんだん下に下ろして行きます
4.次第に息を多くして行きます
5.喉の一番下に指が到達した時には、息が多い裏声にします
<解説>
声帯や喉の動きは、実際外からは全く見えませんね。
発声している時にレントゲンでもとっていればいいんですけれど(笑)
地声を発声している時、声帯は縮んでいます。
裏声になるにつれて声帯が伸びて行きます。
声帯が縮んでいる時に発声されるのは地声。
声帯が伸びている時に発声されるのは裏声。
見えない声帯や喉の動きをなんとか擬似的にでも体験できないかなぁと思って考えた方法です。
なので、私の場合はこの指の動きが今のところピンと来たのですが、もしかしたら逆方法の下から上の動きの方がピッタリくる方もいれば、喉の中央から上下に指を広げて行く動きピッタリする方もいると思います。
この動画の方法は一例ですので、声帯や喉の動きを視覚化するということを意識して練習してみてください。
地声と裏声を繋げる練習2
<舌を使う>
1.舌の位置を確認します。いま力が抜けていますか?口の中のどこに触れていますか?
2.普通に出しやすい音程で地声で発声します。使うのは「あ」でも「お」でもどちらでも構いません。
3.舌を全体的に口の中の下の方に下げて行きます
4.喉が開いて息が多くなっていくのを感じます
<解説>
この方法の場合、喉の開閉の感覚が掴めると思います。
舌を下げるに連れて息が多くなっていきますね。
ただ注意しなければならないのは、舌に力が入るとこもった、通らない声になってしまうという点です。
舌に力が入ると、口の中全体にも力が入り、顎にも力が入ってしまう可能性もあります。
本来、声帯を震わせ、身体の中で共鳴させて発せられるのが声なので、どこかに力がはいると共鳴せず、響きが止まってしまいます。
鉄の棒をそのまま叩くと”カン!”と音が響きますが、鉄の棒を押さえながら叩くと音は響きません。
なので、あくまでも喉の開閉の感覚を掴む方法として試していただければと思います。
ビブラートが奇麗な歌手
代表的な歌い手さんは美空ひばりさんですね。
あの秋元康さんが『川の流れのように』など、プロデュースする際にまず念頭に置いたのがひばりさんの”ビブラート”だったと言います。
「美空ひばりさんのビブラートを奇麗に聞かせたい」
好き嫌いは別として、声の安定感、低音から高音への変わらない声質、ピッチ(音程)の正確さ、抜群のリズム感、絶対的な音感・・・。
しかもその正確さやテクニックに彼女らしい声と歌い回しという個性を持っていることが、なによりの才能。
こんなに才能あふれた類希なる天賦の持ち主のひばりさんですが、いわゆるヒット曲が出ない時期もかなりありました。それから秋元康さんプロデュース作品の『川の流れのように』を含むアルバムをリリースし、小椋佳さん作の『愛燦々』をリリースするまで、かなり長い間新しいヒット曲がでませんでした。
テクニック、声質、声量・・・歌い手に求められるものが揃っていたとしても、だからといって売れるとは限りません。
そのときに歌い手の一番いい部分を引き出す楽曲、これがなにより大切な要素だと思います。
なので、秋元康さんや小椋佳さんとの出逢いは、ひばりさんのとってとてもいいタイミングでの貴重な出逢いだったんじゃないかなと思えます。
ひばりさんのあの奇麗な、規則性を持ったビブラートは、無理に喉を使って作り出しているものではなく、地声と裏声を上手く混ぜ合わせながら生み出されたビブラート。
じっくりお聞きになってみてください。
まとめ
ビブラートをかけるには、ビブラートがかかる発声方法であるミックスボイスを身につけることが有効です。
1.地声から裏声に変えながら発声練習をしていきます
2.地声と裏声を繋げる過程で、地声と裏声のバランスがとれた時にビブラートがかかります
3.地声と裏声を繋げる練習をする際、喉をなぞるように指を使い、指に意識を集中させながら行ってみます。
4.地声と裏声を繋げる練習をする際、舌を下げるようにしてみます
コメント
[…] 次回は地声と裏声を発声し分ける練習とともにお試しいただきたい、地声と裏声を繋げる方法をご紹介します。 […]